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    「何者かつて云ふが、そもそもこゝで半鐘をたたいたから集つて来たんだぜ」

    と云ったそうだ。

    「はあ、なるほど」

    その場に居合せた道平を見かけても、小谷はあんまり紙衣裳に気をとられていたので、それが大病の後でやつと起き出した珍しい姿だといふことに心づかなかつた。が、大分たつて思ひ出した小谷は、

    「さうかの。だが、さう云うても――」

    「ほう、この家鴨あひるの嘴みたやうな金具は、こりや何かな。ほう、こりやよく光る小刀だな。こんなに何本も何に使ふのかな」

    「あの訴訟はどうなつたのかね」

    「徳さん、君は草履ばきぢやないか」

    「それは勝手だが、あんなもの、温泉と思っちゃいかん」

    と、練吉が引つたくるやうにとつてしまつた。

    房一は下駄をつゝかけて外にとび出していた。何気なく腕時計をすかして見た。七時半だつた。まだそんな時間か、とびつくりして考へたのをおぼえている。すぐ傍を、人が駆け抜けていた。房一も走り出した。どういふものか、さつきうす暗がりで見たぼんやりした小さい白い時計の文字盤が頭の中で見えていた。走り出した方は真暗らな畑中の路だつた。今、房一の右にも左にも誰とも判らない人が一杯で、腕や肩がぶつかつた。小谷も練吉もいつしよに駆け出して来た筈だつたが、どこにいるか判らなかつた。

    「どういふことです、わたしにはさつぱり――」

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